『選挙2』という作品を、話しbaで上映することになった経緯は、昨年9月のトークゲストである、星粒憩食店 店主の渋谷さんと年末に話をしている中で、映画上映への話題となり「映画観たあとに参加者同士で話をする時間が欲しいんです」という一言から、「じゃあ話しbaで上映してみましょうか?」となりました。でも、なんで前作すっ飛ばして続編を上映なの?って思う方もいらっしゃるかと思いますが、前作の『選挙』は、時代背景が2005年の小泉政権期なんですよね。安倍さんもまだ一度も総理になってない時代。ちょっと10年近く前なので、やや時代感の差が激しいなと。『選挙2』はつい先日DVDが発売されたばかりで、時代背景も3.11直後の2011年4月ということもあり、まだ記憶に新しい頃のことかな?と思います。そういった経緯で、『選挙2』となりました。 さて、『選挙シリーズ』は、タイトルの印象程、重苦しい内容ではありません。淡々とはしてますがどちらかというとちょっと笑ってしまうシーンもあったりします。
監督は”観察映画”と称される、ナレーションもテロップもなく、ひたすら長回しで対象の姿を追い続ける独特の手法で撮影をする想田和弘監督。普段、起承転結がある映画を見慣れていると、最初はその独特さにビックリしますが、シナリオなくありのままの姿を撮るということは、まさにそれがドキュメンタリーであり、それでこそドキュメンタリーなんだなと気付かされます。
そんな手法で撮られた作品なのですが、前作『選挙』はどんな作品だったかというと、東京に住む議員経験もない気ままに切手コイン商を営む「山さん」こと山内和彦(当時40歳)が、ひょんなことから自民党に白羽の矢を立てられ、縁もゆかりもない神奈川県川崎市宮前区の市議会議員の補欠選挙に出馬することから始まります。自民党というバックアップがある中で、選挙活動のプロ達に囲まれ叱咤激励され、指示通りに動き、選挙カーで名前を連呼し、片っ端から歩く人へ握手をし、毎日ヘロヘロになりながらも開票日までを走りきるという、古くからある選挙の慣習の一連の動きを撮られた作品です。見終わると、一体なんなんだろう?この国の”選挙運動”というものは?という疑問がじわじわと涌いてきます。ちなみに海外映画際でも公開され、数々の賞を取ってますが、観客はコメディ映画だと思って大笑いして観ていたそうです。それほど、日本の選挙運動は滑稽に見えるということみたいです。
『選挙』公式サイト http://www.laboratoryx.us/campaignjp/
そして、続編の『選挙2』はというと、一度議員を辞めていた山さんが、3.11後の中、脱原発を掲げる候補者の少なさに怒りを感じ、再度立候補し、今度は自民党のバックアップのない無所属で、しかも慣習のようなことも、毎日の演説も、名前連呼のような選挙運動もほとんどしないというスタイルで戦っていく姿を追っていきます。果たしてそんなやり方で勝ち目はあるのか!?というところが見せ場ではあるのですが、合間合間に他の候補者の姿も撮影されており、そこが意外と興味深いです。駅前や道路で挨拶と名前だけを連呼する姿を見かけるかと思いますが、それは何故なのか?そこには公職選挙法が関係しているのですが、その当事者である立候補者の本音の部分を聞いてしまうと、いろいろと考えさせらることがあると思います。僕自身、選挙運動のことはほとんど知りませんでしたが、映画を観た後は、なんで興味が持てなかったか?どうすればもっと興味を持つことができるようになるんだろう?とか考えていました。そんな感じで参加される方にも一度、今後の人生、何度もあるであろう”選挙”というものについて向き合うきっかけになればいいなーと思っています。
『選挙2』公式サイト http://senkyo2.com
お時間ある方は是非!普段選挙に興味無さそうな友人の方をお誘い合わせの上、ご参加よろしくお願いします!(普段選挙に興味無い方にこそ参加いただきたい企画なのです♪ 学生歓迎!)
トリの話しbaと共に映画『選挙2』の上映を企画しました、星粒憩食店店主の渋谷と申します。
映画のあらすじや開催の経緯は話しba主催小谷さんのテキストを読んでいただくとして、僕は手短に、このイベントへの思いを。
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2013年7月、自民党が大勝した参院選の翌日に東京・渋谷にある小さな映画館で観た『選挙2』は、僕が選挙について考えを深める大きなきっかけになりました。
観客はわずか10人、うち小学校高学年らしき子どもが2人。2時間半の長編を、時に笑い、時にハラハラしながら、前日までの選挙のことを思い出しつつあっという間に見終えたのを覚えています。
立て続けにやってくる「なんとか選挙」にうんざりする気持ちももちろんありますが(また4月にあります)、難しい用語やネットに流れる単純な文句はひとまず置いといて、「お馴染みの選挙風景」を一緒に眺めながら「これからの選挙」について話をはじめてみませんか?
ただの上映会ではなく、上映中でも周りの人とポロポロ言葉をこぼし合いながら、次に訪れる選挙のときに思い出して繋がっていく時間になればと願っています。
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2/15(日)バレンタインの翌日、どうぞよろしくお願いいたします!友達や恋人を誘って観にくるのもいいかも…。トリの話しba参加者の皆さんが作ってきたなごやかな空気と、選挙というスパイスの出会いを楽しみにしています。
星粒憩食店 FBページ
https://www.facebook.com/
この映画、「今観るべき」映画かと言われれば、そうではないかもしれません。
しかし、「今観ておくべき」映画なのかな、というのが率直な感想です。
2011年の統一地方選。
東日本大震災と福島原発事故からわずか一か月というところで行われた初の大規模選挙でした。
もう4年も前になります。
あれだけ「安全だ」と言われていた原発が事故を起こし、それ以前から相次いだ「失策」により民主党政権はガタガタ、という頃でした。
その中にあって、「候補が誰一人として原発のこと、放射能のことに触れないのはおかしい」と、原発問題を一番に掲げ、さらには政党公認・推薦を一切受けない「完全無所属」という立場で選挙に臨んだのがこの「山さん」。
さらには選挙カーも街頭演説もなし。
言ってることはまともだけど、果たしてそれで選挙に勝てるの?とハラハラしながらその様子を見守る映画になっています。
前作【選挙】(作品名とカッコ書きの「選挙」が紛らわしいので、作品名の方は【 】表記にします。)においては、いわゆる「一般的」な選挙戦を展開した山さん。
それまで小切手商として生きてきた人が、ある日突然「候補者」になって戦う様子が描かれていました。
その中で山さんは、フツーに観ていて「キモッ」と思うような自民党の選挙戦術とそれに関わる人に流されながら、市議補選で当選を果たします。
観ていてホントに馬鹿じゃないかと思うようなシーン、言葉だったり考え方だったり態度だったりが非常に多いのですが、実際今でも地方選の多くはこうした「選挙」によって成り立っています。
早い話、現在の「選挙」とは、どこの組織(政党・派閥、団体、地域等)に属するか によってある程度の「票読み」が行われ、当選ラインに足りない票をどこから集めるか、そのために必要な対策は何か、という戦略戦になっているのです。
「地盤、看板、カバン」なんてよく言ったものだと思いますが、ほんとにその通り。
某公●党なんかはまさにこの「組織」が何よりも強固なわけですから、「票読み」の精度は非常に高いわけです。明確な「組織」なしに戦おうと思えば、それこそ金をつぎ込んでローラー作戦でもするか、さもなくは「風」のある政党や著名人の名を借りて知名度を高める、という作戦が必要となります。
なのでこの【選挙2】で山さんが取った行動は、つまりはこれと真っ向から対立する選挙運動を展開したわけです。
全く「選挙」を知らない人にとっては、「山さんすごいなぁ、迎合しなくて偉いなぁ。頑張れがんばれ」と映るかもしれません。
他の候補者が名前の連呼をする姿を見ながら、「みんなが山さんみたいな選挙をすればいいのに」と思うかもしれません。
あるいは途中で出てくるように、「しっかりと政策を訴えるのが選挙の本来の姿だ」と思うでしょう。
しかしそれが多くの場合で成功しないということを、私たちはあまりにも多く見せつけられてきました。
12年・14年の2回の都知事選では、市民運動系は元日本弁護士連合会会長・宇都宮健児氏を推しました。
格差是正、脱原発などの「市民感情」を背負ったはずの宇都宮氏はしかし、2度とも敗れることとなりました(それもダブルスコア以上の大差で)。
あるいは12年衆院選、13年参院選、14年衆院選と、欠陥だらけの原発政策を進めてきた張本人であり、しかも憲法改悪・TPP推進による地方破壊を推し進める自民党を、多くの有権者が選び続けてきたことがその証左です。
(一方で14衆院選沖縄選挙区や滋賀・佐賀の知事選では与党推薦候補が破れているのですが、これは「より大きな組織」による賜物である、と僕は見ています。)
その結果、「選挙によって選ばれた」総理大臣が中東歴訪で余計な発言をして日本人2人の命が奪われ、さらにその後も憎悪の連鎖を招くような発言を繰り返しながら、集団的自衛権の適用に触れるなど戦う準備を表に裏にと押し進めています。
そして「断固反対」だったはずのTPPも、いつの間にか妥結に向けてまっしぐら、「一歩も引かない」はずの重要5品目ですら次々と譲歩していっている状況が明らかになっています。
原発も各地で再稼動への準備が進み、再び国のエネルギー政策の中で「重要なベースロード電源」と位置付けられる始末。
あまりの酷さに呆れて物も言えません。
(いや、ほんとは言いたいんですけど、あまりに酷いことが多すぎてニュースの読み込みが追いつかない)
3.11の事故から3年以上経って選ばれた政権でこれです。
いえ、3年以上たって「私たちが選んだ」政権がこれなんです。
おそらくこの文章を読まれる方の中には、「私は選んでない」という方もあるでしょう。
しかし、民主主義というシステムの中で、「私たち」が選んだことには変わりありません。
そしてきっと、この夏に行われる参院選でも、この風潮は変わらないでしょう。
その点において、こんな言い方をしたら申し訳ないけれど、僕はもう絶望しています。
一体何をどうしたら、「本来の選挙」、「在るべき民主主義」を取り戻せる(創れる)のでしょうか。
とても難しい問題ですが、個人的には何よりも「市民生活の中に政治を取り戻す」ことが大切だと思っています。
今、政治と私たちの暮らしの距離はとても開いてしまっています。
低い投票率も問題ですが、4年に一度の選挙の時にしか、その「政治」を見ることがない、そんな私たちの暮らしの方が大きな問題を抱えていると思うのです。
本来政治とは、私たちが暮らす場所のことをみんなで考えるもの。
それを効率的に行う仕組みが議会であり、そこに声を届ける代表を選ぶ手法が選挙だったはずです。
選ばれた「代議士」はその地域の人の声を集め、それをもって議会で話し合うことが本来目指した間接的民主主義だったはずなのですが、なぜか今は「この人ならやってくれそうだから任せよう」という人を決めてハイ終わり、になってしまっています。
その姿から脱却しない限り、政治はきっと変わりません。
正直「選挙に行きましょう、投票率を上げましょう」だけではなく、その先の4年間で自分が政治に向かって何をするのかということが考えられていないといけないと思うのです。
とはいえ、政治は自分たちのもの、と言われてなるほどと納得して進める人ばかりではないのも事実です。まずは現行の「選挙」のおかしさに気づき、与えられた「選挙」で戦うことでは勝てないという絶望があって、初めてスタートラインに立つのかな、と思うこともしばしば。(自分もそうでしたので。)
であるならば、この【選挙】、【選挙2】を観ることでその追体験ができれば、あるいはこの「民主主義を自分たちが創る」という感覚が共有できるのかな、とも思います。
もちろん観てすぐに理解ができる人ばかりではないでしょう。
正直、結構長いし場面によっては理解できなかったり、退屈だったりするかもしれません。
しかし、今これを観ておくことで、あるいはこの先の統一地方選や参院選のときに、「そういうことだったのか」と気づくきっかけになり得るのだろうと思います。
「今観るべき」映画ではないかもしれないけれど、「今観ておくべき」映画だ、と冒頭で言ったのはそういう意味です。
難しいことは考えないでいいです。
これを観て何かを学ぼうとか、何か高尚なことを考えようとかする必要はありません。
「そういうもんなんだ」と感じてください。
それはきっと種になり、いつかふっと芽を出します。
この映画は、そういう映画だと僕は思っています。
ということで、2月15日「パレットとっとり」での上映会でお待ちしています。
偽百姓 Blog:http://d.hatena.ne.jp/nice100show/
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